あらゆる業務にAIが入り込みつつあり、人事の現場でも業務内容そのものの再設計が迫られています。しかしAIに任せられる業務は積極的に移行される一方、判断や関係構築、価値創出にかかわる領域では、むしろ人の重要性が増しています。
本格的なAI時代を前に、企業は今こそ「どのような人材を採用すべきか」を再定義すべき時期に差し掛かっているともいえるでしょう。本記事では、AI時代でも活躍し続ける人材に共通する5つの特徴を紐解いていきます。
特徴1 デジタルリテラシーとAI活用力
単なるITスキルではなく、「どの業務にどのAIツールを使えば成果が高まるのか」を見極め、自ら試行錯誤できる力が求められています。たとえば、生成AIを使って資料のたたき台を短時間で作成し、人が最終チェックや付加価値の高い部分に集中するような業務を、自らで推進できる力です。
AIの下準備があれば、調査や文書作成など時間のかかる作業を効率化でき、人間はより高度な判断や関係構築、問題解決にリソースを割けるようになります。そのような仕組みをつくれる人材は企業にとって貴重な存在であり、組織全体の生産性アップにつなげられるでしょう。
特徴2 課題発見力と創造性
AIがいくら高性能でも、「そもそもの課題は何か」を適切に見極められなければ、本質的な問題解決は難しくなります。生成AIは過去のデータを参照し最適解を導くことは得意ですが、解決策を考える前段階の「問いの設定」や「問題の本質を突き止める力」は、人間固有の強みです。
たとえば「リモートワークでも生産性を上げるにはどうすればいいか」とAIへ質問するだけでは、ありきたりな提案しか得られません。しかし「リモートワークの生産性を上げるために、メンバー個人の自己管理力、コミュニケーション頻度、メンバー間の協力やフィードバックなどのチームの連携力など、複数の観点からアイデアを出してください」と、一歩踏み込んだ深い問いを設定することで、より本質的な解決策を導き出すことが可能になります。
さらに、AIが提示する案に新たな発想を加えたり、意図的に条件を変えて試行錯誤したりする創造性も、AIには真似できない人間ならではの価値です。

特徴3 コミュニケーションと共感力
人事労務の現場では、メンタル不調の社員のケアや新制度導入時の不安への対応など、繊細な感情のやり取りが必要なシチュエーションが頻出します。いくら高度なチャットボットを導入しても、相手の表情や声のトーンの微妙な変化を読み取り、的確に寄り添うことは容易ではありません。ここに、人間の「共感力」や「コミュニケーション力」が生きてきます。
相手の置かれた背景を理解し、柔軟にアプローチを変えながら本音を引き出す・・・そうした人間らしい対話能力は、組織の安定や信頼関係の構築に欠かせない要素です。社会がどう変化しても、人間同士のつながりや感情を尊重する力は代替されにくく、その重要度は今後さらに増していくでしょう。
特徴4 学び続ける力と適応力
AIをはじめとするテクノロジーは非常に速いペースで進化しています。1年前の知識だけに頼っていては新しい価値創出に貢献しにくく、学び続ける意欲や環境への適応力が成果を左右します。
実務レベルでは、たとえば最新のAIツールを試して労務管理や制度設計に活かす、法改正や働き方の新トレンドを常にキャッチアップして柔軟に反映するといった行動が挙げられます。変化を前向きに捉え、自分のスキルセットをアップデートできる人材は頼もしい存在です。
一方、新技術や新しい制度導入に対して「昔のやり方」に固執する姿勢は、組織全体の成長を阻むリスクがあります。企業としても、リスキリング(技能再習得)の支援や学習しやすい風土づくりを進めることが不可欠です。

特徴5 自分の頭で考え、責任を持って判断する力
AIが高度な分析や提案を行ってくれる時代でも、最終的な意思決定の責任はあくまで人間が担います。いかにAIの提示する答えがもっともらしく見えても、誤ったデータやバイアスが含まれている可能性はゼロではありません。
また、自社の理念や文化と合わない施策をAIが示した場合、その違和感に気づけるのは人間ならではの感覚です。だからこそAIのアウトプットを鵜呑みにせず、「本当に正しい選択とは何か」を批判的に検証し、自分の頭で考え抜く姿勢が重要になります。分析結果を参考にしつつ、リスクや背景要因、組織の倫理観なども総合的に加味できる人こそ、時代を問わず信頼される人材と言えるでしょう。
AIと人間は補完しあえる
これからの採用基準や育成方針を考えるうえでは、単なる知識や経験だけではなく「変化に順応し、新しいものを積極的に取り込み、周囲と良好な関係を築きながら価値を生み出せる人材」を見極めることがカギになります。面接やグループワークでAI活用に対する考え方や課題設定力を探ったり、社員に継続的な学習機会を提供してソフトスキルの伸長を図ったりする取り組みは大いに効果的でしょう。
AIと人間が補完し合えば、生産性と創造性を同時に高めることが可能になります。だからこそ、人が担うべき領域を明確化し、「AIに任せるところは任せ、人間がしかるべき判断を下す」体制を整えることが重要です。AIを恐れるのではなく、味方につけて自分の強みを活かす。そのような姿勢を持った人材こそが、これからの時代に真の成果を出す存在と言えるでしょう。

当記事は、人間と生成AIの共同作業により執筆しています。
人とAIの作業比率 2:8