HRbaseでは労務管理業界におけるAI普及の推進を目的とし、労務×AIをテーマにしたさまざまな切り口のコンテンツを提供しています。
当コラムシリーズでは、HRbase社内の社会保険労務士、AI開発の専門家、編集者、ライターと生成AIがそれぞれの知見を持ち寄り、AI時代だからこその魅力あるコンテンツの発信に取り組んでいます。
この記事では、AIでコンテンツを執筆できる時代に「人」がどう関与し、どうすればより価値のあるコンテンツを作成できるか、HRbase編集部AIチームがどう考えているかについて解説させていただきます。
ChatGPTの登場で革命が起きた、コンテンツ制作の現場
現在のインターネット上にはAIが執筆したと思われる記事が氾濫しています。この現象が本格的に始まったのは「ChatGPT」の登場からです。それ以前にも特定分野のデータに基づいた自動生成ツールは存在していましたが、自然な文章を生成する能力や、多様なテーマに対応する汎用性は限定的でした。
ChatGPTの登場は記事作成の現場に大きな変化をもたらし、特にコンテンツの量産が求められるWebマーケティングの現場においては、人件費や発注リソースを大幅にカットする策として初期から注目されました。
検索エンジンの対応
初期段階ではAIが生成した記事は人間が書いた記事に比べて品質が劣ることが多く、読者にとっても検索エンジンにとっても見分けがつきやすいものでした。しかしAIはより自然で、論理的な構成を持つ文章を生成する能力を獲得していきました。これによりAIが書いた記事は、あたかも人間が執筆したかのように見えるようになり、その識別は困難になってきています。
検索エンジン側もこの動きを静観していたわけではありません。Googleをはじめとする各社は当初、AIが書いた記事そのものを一律に排除するのではなく、「役に立つコンテンツ」かどうかの観点から評価する方針を表明しました。つまり人間が書いたかAIが書いたかにかかわらず、読者の検索意図を満たし、正確で信頼できる情報を提供している記事であれば検索順位を下げないという姿勢です。これはAIを活用した効率的なコンテンツ制作を容認しつつも、スパム的な低品質コンテンツの氾濫を防ぐためのバランスの取れた戦略だったといえます。
しかしこの方針はAI生成記事のさらなる増加を促し、特にアフィリエイトサイトや情報サイトの運営者はAIを使って大量の記事を短期間で生産して検索エンジンの上位表示を狙うようになりました。結果、検索したページには、事実確認が不十分であったり独自の見解や深い洞察に欠ける、表面的な情報に終始する記事が増えるという問題も生じています。
より記事品質が求められる時代へ
これを受けて、検索エンジンは品質評価のアルゴリズムをさらに洗練させていきました。単にキーワードが適切に含まれているかだけでなく、「経験、専門性、権威性、信頼性(E-E-A-T)」といった、人間による深い知識や経験が反映されているかをより重視するようになってきています。AIが書いた記事でも、人間が適切に監修・編集し、信頼性を高めることで、検索エンジンに評価される可能性は充分にあり、一方で単にAIが生成しただけの、中身の薄い記事は評価されにくくなってきています。
検索エンジンはAI記事を完全に排除するのではなく、品質の観点から評価する形で対応を進めています。そしてもはやコンテンツ制作の現場からAIを排除することはできないレベルまで浸透しています。
労務×AIコラムの設計
このようなコンテンツマーケティングの流れの中で、HRbase編集部はあえて「AIを活用したコンテンツ」を出し続ける決断をしています。
その理由は「労務管理のAIサービス」を提供している会社として、業界に対するメッセージを伝え続ける必要がある、と考えたからです。
メディアの意思をコンセプトを明確にする意味
HRbaseは労務管理×AI領域でのトップランナーを目指しており、現在は労務管理特化型のAIエージェントの開発を進めています。しかしどんなに優秀なAIがあっても、人間が使いこなすことができなければ意味がありません。だからこそ、私たちの記事で、ひとりでも多くの人事労務担当者にAIに親しんでほしい、そう考えました。
そうなったとき、必要なのは「HRbaseが出す記事である以上、こうする」という意思とコンセプトです。すでにAI活用に関するメディアは多く存在しますから、一線を画したコンテンツをつくる必要がありました。
1:人事労務の現場にフィットしたAI活用ノウハウが読めること
2:効率化のためではなく、高品質化のためにAIを使うこと
3:AIと人の共同作業であることを明らかにし、サービスの思想観とつなげること
届けたい読者は以下の層です。
【広義の読み手】
・AIの情報収集をしている人
・人事労務に仕事で携わっている人
・生産性を高めることに責任がある人
【狭義の読み手】
・企業の人事労務部門に所属している人
・その中でも責任者、マネージャー
AIと人の共同作業であることを明らかにする意味
「労務×AIコラム」の大きな特徴は、AIが関与していることを明らかにしながら、そこに人間の手を加え、唯一無二のコンテンツに仕上げているという点です。記事のテーマによって人間の「編集」の必要性と関与レベルは変わるため、企画を立てる段階でどれくらい人の手を入れるかを決めますが、実際の編集場面では正確性の担保や独自性の追加などを柔軟に行っています。
その結果、人が調べた根拠や意思がどれくらい反映された記事になったのかは記事末尾の「担当割合の図」で示しています。

現代社会の読者は、多くのコンテンツの中から「正しい情報・有益な情報」をピックアップし続ける必要がありますが、中でも「執筆者」はその判断の重要要素です。AIを活用しながらも、社会保険労務士や労務の専門家、ライターの関与度を示すことでE-E-A-Tを担保し、読み手に一定の判断を委ねることを目的としています。
プロンプトだけでは優良な記事をつくれない理由
HRbaseには人事労務の現場に精通した人間が多く在籍しており、中でも代表の三田は社会保険労務士であるとともに、自らAI開発を行っているという強みを持っています。そのため「労務×AI」の記事開発においても、社内で高精度のプロンプトを組むことができました。
当メディアで人間の割合が2もしくは3の記事は、おおよそ三田がプロンプトを書き、AIで文章のたたき台を作成したのちに人間の手で再編集した記事になります。
労務×AIコラムの作成プロセス(2:8 もしくは 3:7バージョン)
1:編集部にて仮テーマを作成
2:三田でプロンプトを作成し、テキストのたたき台を作成
(この段階では文字数が10000~20000文字程度あることが多い)
3:三田が数段階に渡ってAIに指示を出し、内容を取捨選択し、構成を作成
4:ライターが構成を確認し、推敲を行い3000~4000文字程度の記事として完成させる
2の工程にはプロンプトの知識が、3の工程には人事労務の専門知識が求められます。実際、三田が作成したプロンプトを元に社会保険労務士ではないメンバーが担当してみた結果、工数はかえって増え、記事のクオリティも担保しにくいことになりました。
その理由は複数あります。まずはその記事テーマがどのAIツールと相性がよいかを見極めるスキルが必要です。また出力させたテキストに対して適切な修正をかけるときも、三田は音声でAIに対して的確な指示を出していますが、専門家ではない人間にはその繊細なチューニングは不可能です。またライターに渡す前にハルシネーションの発見や、法律や制度に関する誤りのチェックもしておく必要があります。
Webコンテンツを作成するためのプロンプトは世の中に溢れていますし、プロンプトエンジニアリングの知識がある方も多く存在しますが、「労務管理に特化したコンテンツ」をAIを活用して作成するためには、やはり労務管理の専門知識と、AIの知識の両方が必要だといえるでしょう。
効率化ツールを越えるAIを目指して
HRbaseは単なる業務効率化ツールではなく、業務効率化ツールではカバーしきれない領域の課題解決を目指すAIツールです。
そこには「人の力」が不可欠であり、専門知識を有した労務人材が「AIという武器」を持つことで、これまで見逃されていた課題に対しアプローチができることを目指しています。
このサービス開発思想は、「労務×AIコラムの執筆コンセプト」にも通じることです。すべてをAIにさせるのではなく、どのような情報を与えるのかを人間が精査し、専門家によるチューニングを行い、アウトプットの責任は人間側が持つ。その全プロセスに、効率化を越えた「AIとの共同作業」という目的が込められていれば、たとえ作業の8割をAIに委ねたとしても、独自性の高い記事が仕上がるはず、そう考えてコンテンツ作成を行っています。
システム開発にも、コンテンツ作成にも、まずは情報を自分たちで咀嚼し、「私たちはこう考える」という軸からぶらさずに仕上げて提供していくことに価値があると信じています。
当メディアが、人事労務の業務にAIを活用したいとお考えの方とHRbaseをつなぐパイプとして機能していくことを目指し、今後も記事提供を続けていきたいと思います。
補足
当記事の9割は編集部で作成しました。AIには第1章「ChatGPTの登場で革命が起きた、コンテンツ制作の現場」の情報整理、および全体の表記揺れのチェックを担当させています。
