
ファストドクター株式会社
導入前の課題
・業務の3~4割を占めるヘルプデスク業務の工数を削減したかった
・問い合わせ内容は多岐にわたり、生産性を向上させられていなかった
・「経営労務」への関与により時間を使いたかった
導入の効果
・ヘルプデスク業務の全体的な工数が削減できた
・労務グループのメンバーに権限委譲がしやすくなった
・顧問社労士に戦略的な相談ができるようになった
ファストドクター株式会社は、日本最大級の医療支援プラットフォーム「ファストドクター」を運営するスタートアップ企業です。
労務グループとしての課題は、従業員からのヘルプデスク業務の工数が大きいこと。その効率化にAIを活用できないかと考え、HRbaseが導入されました。
今回は経営管理部 副部長の田中祐さんに参加いただき、HRbaseで解決できた課題と、労務グループが経営に与えられるインパクトについてお聞きしました。
4名の労務グループで、600名の労務管理を担当
労務管理体制について教えてください。
田中
私はファストドクター初の労務マネージャーとして中途入社しました。
入社当時は正社員が30名、アルバイトが150名程度で、私1人で対応できる規模でした。しかし会社の成長にともない人数が2倍3倍と増え、業務量も大幅に増えていきました。
現在の社員数は約160名、アルバイトが約 340 名、トータルで約 500 人で業務を行っています。在宅医療、オンライン診療、医療経営支援の3つの事業があり、それ以外も臨床試験支援やAIによる医療の業務支援などのインキュベーション事業を展開しています。
それを支える部署として、我々が所属する労務グループを含む経営管理部のほか、人事部、公共政策部などがコーポレート部門にあるという形になっています。

労務グループは何名いらっしゃいますか?
田中
労務グループは4名で、正社員2名、派遣社員2名という構成です。
派遣スタッフは主に、労務手続きに関するお問い合わせへの回答や、各種手続きのご案内を行っています。内容に応じて担当者へお繋ぎいたします。医療の現場は多くのスタッフがチームで支え合っており、たとえば往診を行うドクターを送迎するドライバーなどさまざまな役目のスタッフが介在します。当社は提携医療機関からその労務管理を含めて委託されており、入退社管理や残業管理、給与計算といった業務を一括して労務グループで行っています。
労務管理にAIは必須になる。そう考え導入したHRbase
HRbaseはどこで知っていただけましたか?
田中
最初は広告ですね。
コーポレート部門の生産性向上を重点的に取り組んでおり、AIをパートナーとして労務戦略に注力する方法を考えていたときにHRbaseを発見し、興味を持ったという流れです。
使い始めの印象を教えてください。
田中
正直、本当にAIが正しい回答を出してくるのか?と半信半疑ではありました。
労働法や労働基準法はそれなりに複雑ですし、法律である以上解釈によっても回答は変わります。
ただしAIは判断してくれるものではなく、選択肢を与えてくれるものですよね。
ChatGPTにもハルシネーションはありますし、どのAIであってもすべて信じられるわけではありません。
HRbaseは社労士や弁護士が監修した資料を元に回答を出してくれますし、実際使ってみると予想より精度が高かったため導入に踏み切りました。
課題は、ヘルプデスク業務の効率化
HRbase導入前の課題を教えてください。
田中
従業員からの問い合わせに対するヘルプデスク対応の工数が大きかったことです。データ上、業務の3〜4割はヘルプデスク対応の時間でした。
当然ながら問合せをしてくれる従業員の労務知識や内容の難易度も毎回変わります。内容によっては派遣スタッフだけでは対応しきれず、最終的にはマネージャー判断になることもありますし、そのための情報収集や回答作成、チェック業務にかかる時間が生産性向上のボトルネックになっていました。
従業員からの問い合わせにはどのようなものが多いのでしょうか。
田中
一番多い問い合わせはアルバイトスタッフの社会保険手続き関連です。その他、有給休暇や勤務時間と内容は多岐にわたりますね。
また弊社は業務上、医療知識を持つ専門職の方も多く採用していますが、こうした方々は専門職の特性上、労務に携わった経験がないことがほとんどです。そのため、わかりやすい説明を心がける必要もあり、対応に時間を要することもありました。
そのようなお問い合わせに対して、労務グループはどう対応してきましたか?
田中
自分で調べるのはもちろんのこと、顧問社労士の先生への質問を繰り返し、ひとつひとつ解決していくしかありませんでした。困っている現場スタッフを待たせるのも辛いことですし、迫る回答期限の中で正しい解決をしなければいけません。
しかしなかなかリードタイムを短縮できず、大きな課題となっていました。
500名のスタッフからのご質問は、数もかなり多そうですね。
田中
質問はフォームで送ってもらい、労務グルーム内でステータス管理を行っていますが、未解決の質問が溜まると心理プレッシャーもどんどん大きくなります(笑)
また質問とは別に「労務トラブル相談窓口」を設けていますが、センシティブな内容になると回答にも余計に時間がかかります。
この運用方法を始めて3年目ですが、約3000件の対応履歴が残っています。 年間1000件と考えると、ヘルプデスク業務効率化の優先順位がいかに高いかをイメージしていただけるのではないかと思います。
HRbase導入で、質問の質が変化
HRbase導入後、すぐに成果は出ましたか?
田中
はじめはメンバーも「本当に正しい答えが出るのか」とは思っていたようです。
そのためHRbaseのAIに聞いたことを「これで合ってますか・・・?」と私に確認してくることもあり、その都度私がチェックをして「合ってるよ」というやり取りをしていました。そのようなプロセスは納得感を得るためには必要ですよね。どんなにいいシステムでも、使う側の気持ちも大切ですから。
AIは瞬時に答えが出るため、不安に思う方が多いのは事実です。
田中
使い続けるうちにHRbaseの答えに大きなブレがないことが理解でき、今ではメンバーがAIの回答を元に選択肢を3つ出し、「これが正しいと思うけど、どうですか?」という質問も来るようになりました。
その質問に対し「この選択肢もあるのではないか」というような、HRbaseの回答を元にしたディスカッションが生まれることも増えています。
田中さんに来る質問の質が変化したということですね。
田中
はい。ポジティブな変化だと考えています。

ヘルプデスク業務の工数削減が実現
最も時短になった業務は何でしょうか。
田中
まさにヘルプデスク業務で時短が進んでおり、期待通りになっています。
これまでは同じような質問であっても、マニュアル変更や最新の法改正情報に合わせた対応に時間がかかっていました。慌てて厚労省のサイトを見ても自社への落とし込み方法を判断できず、グループ内での確認会議も多かったのですが、最近はそれが減ったと感じています。
ヘルプデスクへ来る質問数は変わらなくても、対応工数が大幅削減されたということですね。
田中
そうです。回答のリードタイムが減ることで、時間を別の業務に充てられるようになりました。HRbaseの導入で労務グループ内の生産性はかなり向上したと感じており、ここからは経営管理部全体の効率化にも取り組みたいと考えています。
経営管理部全体の効率化について、詳しく教えてください。
田中
経営管理部には6つの部署があり、それぞれがヘルプデスク対応に月間60時間程度、合計で約360時間を割いています。この時間を効率化できればインパクトは大きいでしょう。
しかし一方で、私の目の届かないところでAIに回答を委ねてしまう不安があるのも事実です。理想は他部署や従業員にもHRbaseの利用を一部開放し、各自で基本的なことを解決してもらえる体制ですね。それができれば、会社全体の生産性は一気に上がるはずです。
全社の生産性向上に寄与できる体制づくりは、まさにこれからの労務の仕事といえますね。
田中
人事労務は「人事企画」と「労務」に分かれますよね。私は人事企画は車のドライバーの役割だと考えています。それに対し労務はマシンをメンテナンスするエンジニアチームで、労務管理の精度向上を行い、組織の構造自体にアプローチできれば、車つまり会社のスピードをどんどん上げられると考えています。労務は会社のハード面を司る部署であるべきではないでしょうか。
顧問社労士との新しいリレーションで「経営労務」を推進
顧問社労士の先生とは、どのようなリレーションを行っていますか?
田中
実はHRbase導入前後で、顧問社労士の先生とのかかわり方が大きく変化し、労務と経営をリンクさせやすくなってきたと感じています。
これまで顧問社労士の先生には、労働基準法や安全衛生法に関する対応のレビューを中心に、法的リスクを予防するという観点で関与いただいておりました。しかしHRbaseの導入後は、労務戦略、私たちは「経営労務」と呼んでいるのですが、いかに人件費効率を高めていくかなど施策に対しての合理性や、新しいチャレンジのための相談ができるようになりました。
リスク回避の相談相手から、労務戦略を立てるための相談相手に変化したということですね。
田中
そうですね、今までは就業規則の改定や労務に関する課題発生のたびに顧問社労士の先生に確認を行っていましたが、その前にHRbaseを挟むことで、軽微なことを自分たちで手短に解決できるようになったのは大きな進歩です。
労務を経営戦略とリンクさせたいという、田中さんの意思を感じます。
田中
私の前職は上場企業で、業務管理部の副部長という立場で経営にも携わっていました。 その経験を活かし、弊社に労務マネージャーとして入社したという経緯があります。
上場企業はやるべきことが固まっており、それを維持もしくはスケールさせていく仕事が中心です。しかしゼロから仕組みをつくれるというベンチャーの魅力に惹かれて転職してきました。
労務管理は経営から遠そうに見えますが、人件費コントロールという意味では事業の根幹に直結します。そのうえで労務管理を経営戦略と紐付けて設計していく仕事は非常に面白く、やりがいにもつながっています。
拡大フェーズの労務管理にHRbaseを活用
まさに「これからの労務管理」について考え、実践されていらっしゃいますね。
田中
AIの台頭で働き方の転換期が来ており、現場に立つ私たちもコーポレート業務のあり方を見つめ直すべき時期に入ったと感じています。
今はヘルプデスク対応や手続き業務を担当している労務担当者も、役割自体が変化するはずです。
具体的には、どのような役割になるとお考えですか?
田中
これまで中心だったヘルプデスク対応や手続き業務に加えて、今後はより戦略的な役割を担う方向へと舵を切れるようになると思います。
HRbaseのようなAIサービスはもちろん、給与計算や人事系システムも今以上に進化するでしょう。そうなると私たちは作業者ではなく、組織と個人の生産性を可視化して改善する専門家、つまり労働生産性のKPIアナリストのような役割を担うことができます。
労務管理担当者が事業のアーキテクチャに直接関与し、もっとインパクトのある仕事ができるようになったら良いと考えていますし、そうなるべきだとも思っています。
ありがとうございます。最後に、今後のHRbaseの活用についてお聞きできればと思います。
田中
ファストドクターは「医療×IT」の会社です。サービスの思想観は「労務×IT」のサービスを展開されているHRbaseとは似ていると思っており、期待しています。
私たちは拡大フェーズに入っており、従業員数が増えていく見込みです。人が介在しなくても済む部分はどんどんAIに任せ、ムダ・ ムラ・ムリの「3M」を排除して生産性向上を実現させていきたいです。引き続き、HRbaseを充分に活用させていただきます。

HRbaseも、ファストドクター株式会社さまの「経営にインパクトを与えられる労務グループ」の実現をサポートできれば幸いです。貴重なお話をありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。