人事労務業務において、社内周知文の作成は避けて通れない定常業務の一つです。月次の勤怠締めリマインド、年次の健康診断案内、各種制度変更の通知など、その種類は多岐にわたります。
これらの文書作成に多くの時間を費やしている人事担当者にとって、生成AIの活用は業務効率化の有効な手段となります。適切なプロンプト(AI への指示文)を用いることで、品質の高い社内周知文を短時間で作成することが可能になるのです。
本記事では、ChatGPTやClaude等の生成AIを活用し、実務で即座に使用できるプロンプトテンプレートをご紹介します。これらのテンプレートを活用することで、文書作成時間の大幅な短縮と、業務の標準化を同時に実現できます。
今すぐ使える!基本のプロンプト3選
【簡易版】勤怠締めリマインド用プロンプト
毎月発生する勤怠締めの連絡は、シンプルながら確実に伝達する必要がある重要な業務連絡です。以下のプロンプトを使用することで、必要な情報を漏れなく含んだリマインド文を作成できます。
あなたは優秀な人事部の担当者です。
全社員宛に送る「勤怠締めリマインドメール」を、次の要件に沿って日本語で作成してください。
#目的
期限までに社員全員が勤怠の締めを行うため。ただし、毎回数人の人は締めを行わないため、必ず締めを行ってもらう必要がある。ただし、人事部から高圧的な態度はとってはいけないため、それを考慮し、締めが行われなかった場合の影響なども含めて文章や内容を作成する必要がある。
#含める内容
・宛先:全社員
・締切日:10月31日(火)17時
・トーン:丁寧だが堅苦しくない
・文字数:400字程度
・含める内容:締切日時、修正が必要な場合の対応、問い合わせ先
#作成条件
・箇条書きを含めて読みやすくする
・本文は冒頭の簡潔な挨拶 → 箇条書き → 結びの順で記述
・指示文や注釈は含めず、メール本文そのものを提示すること
上記のプロンプトによって生成された文章サンプルは以下になります。
適宜、カスタマイズをして使用することになります。
皆様お疲れ様です。人事部です。
いつも正確な勤怠入力にご協力いただき、ありがとうございます。
以下のとおり勤怠締め切りをご案内いたします。必ずご対応をお願いいたします。
期限内に手続きを行うことで、スムーズな給与処理にご協力いただけますと幸いです。
既に手続きをお済ませの方はご対応ありがとうございます。
また、入社間もない方や操作にご不明点がある方は、お気軽にお問い合わせください。
・締切日時:10月31日(火)17:00
・修正申請:勤怠システムで該当日のデータを修正申請(11月3日(金)12:00まで)
※締め後の修正は原則承りかねます。システムエラー等で申請できない場合は併せてご連絡ください。
・お問い合わせ先:人事部勤怠担当(内線1234/メール: hr-timereport@example.com)
期日までに締めが完了しない場合、翌月給与計算に反映できず、支給が遅れる可能性があります。
お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。
◆カスタマイズのポイント
- 締切日時:実際の締切に合わせて変更
- 対象範囲:特定部署に限定する場合は宛先を調整
- 緊急度:必要に応じて件名に【至急】等を追加

【標準版】健康診断のお知らせ用プロンプト
労働安全衛生法に基づく定期健康診断の案内は、法的要件を満たしつつ、従業員の受診を促す配慮が必要です。以下のプロンプトで、情報の網羅性と読みやすさを両立した案内文が作成できます。
あなたは優秀な人事部の担当者です。
以下の情報を基に、定期健康診断の案内文を作成してください。
#目的
法律上健康診断は全員に受診してもらう必要があり、その必要性とともに内容をわかりやすく伝える。
#基本情報
・実施期間:11月1日(水)~11月30日(木)
・場所:本社2階 健診室
・対象者:正社員およびパート社員のうち、本メールが届いた方
・受診時間:9:00~16:00(所要時間約1時間)
#作成条件
・文字数:400字程度
・トーン:親しみやすく、受診を促す前向きな表現
・構成:概要→詳細→注意事項→問い合わせ先
・強調:法定義務であることと、費用は会社負担であること
見出しや箇条書きを使って見やすくしてください。
上記のプロンプトによって生成された文章サンプルは以下になります。
適宜、カスタマイズをして使用することになります。
社員の皆様
いつもお疲れ様です。人事部より、年に一度の定期健康診断についてご案内いたします。
ぜひこの機会に、ご自身の健康状態をチェックしてください。
■実施概要
期間:11月1日(水)~11月30日(木)
時間:9:00~16:00(所要時間:約1時間)
場所:本社2階 健診室
対象:正社員およびパート社員のうち、本メールが届いた方
■検査項目
・基本検査(身長、体重、血圧、視力、聴力)
・血液検査
・胸部X線検査
・心電図検査(35歳以上)
■注意事項
・受診は法定義務です。必ず期間内に受診してください
・費用は全額会社負担です
・前日21時以降の飲食はお控えください
■予約方法
社内システムより希望日時を選択してください。
混雑が予想されますので、お早めの予約をお勧めします。
ご不明な点は人事部健康管理担当(内線:5678)までお気軽にお問い合わせください。
皆様のご協力をお願いいたします。
◆カスタマイズのポイント
- 実施場所:外部医療機関の場合は、アクセス情報を詳細に記載
- 検査項目:年齢や職種による検査項目の違いを明記
- 予約方法:自社の予約システムに応じて手順を具体化

【詳細版】年末調整の案内用プロンプト
年末調整は税務手続きの中でも特に複雑で、従業員にとって理解が難しい業務の一つです。以下のプロンプトを使用することで、必要書類と手続きの流れを分かりやすく説明する案内文を作成できます。
あなたは優秀な人事部の担当者です。
年末調整の案内文を作成してください。以下の要素を必ず含めてください。
#目的
期限までに社員全員が年末調整書類を提出してもらうため。ただし、毎回数人の人は提出を行わない。あくまで必要性があるから告知している旨をを考慮し、年末調整書類の提出が行われなかった場合の影響なども含めて文章や内容をわかりやすく丁寧に作成する必要がある。
【必須情報】
・提出期限:11月20日(月)
・提出書類:
1. 給与所得者の扶養控除等申告書
2. 給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
3. 給与所得者の保険料控除申告書
・提出先:人事部給与担当
【添付が必要な証明書】
・生命保険料控除証明書
・地震保険料控除証明書
・住宅ローン控除関係書類(該当者のみ)
【作成指示】
・文字数:600字程度
・初めての人でも分かるように丁寧に説明
・提出書類はチェックリスト形式で表示
・よくある質問を2-3個含める
・期限厳守の重要性を強調
上記のプロンプトによって生成された文章サンプルは以下になります。
適宜、カスタマイズをして使用することになります。
社員の皆様
いつもお疲れ様です。人事部より年末調整手続きのご案内です。
毎年ご協力をいただいておりますが、一部提出漏れが発生しており、税額計算が年内に完了しない事例があります。所得控除を正しく反映し、年末の税負担を適正化するため、全社員のご提出が法的にも必要です。
■提出期限
2023年11月20日(月)17:00 【厳守】
※期限を過ぎると年末調整が受けられず、ご自身での確定申告が必要となります
■提出書類チェックリスト
以下の書類を全てご提出ください。
□ 給与所得者の扶養控除等申告書(緑色の用紙)
□ 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(青色の用紙)
□ 保険料控除申告書(赤色の用紙)
■証明書の添付が必要な方
以下に該当する方は、必ず証明書を添付してください。
・生命保険に加入→生命保険料控除証明書
・地震保険に加入→地震保険料控除証明書
・住宅ローンがある→住宅借入金等特別控除申告書、残高証明書
■よくあるご質問
Q1:書き方が分からない箇所があります
A1:記入例を社内ポータルに掲載しています。また、11/10(金)に説明会を開催します。
Q2:保険の証明書が間に合いません
A2:証明書は後日提出も可能です。まず申告書のみ期限内にご提出ください。
Q3:昨年と変更がない場合も提出が必要ですか?
A3:はい、全員提出が必要です。変更がない場合も、その旨を申告書に記載してください。
■提出方法
人事部給与担当(3階)まで直接お持ちいただくか、各部署の取りまとめ担当者へお渡しください。
ご不明な点は、人事部給与担当(内線:2345、メール:nencho@company.co.jp)までお問い合わせください。
皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
◆カスタマイズのポイント
- 書類の色分け:自社で使用している申告書の色に合わせて変更
- 説明会情報:実施する場合は日時・場所・申込方法を追記
- 電子申請:対応している場合はシステムへのアクセス方法を記載
その他の活用シーン
上記の3つの基本パターン以外にも、生成AIを活用できる場面は多岐にわたります。
定期的な業務連絡
- 有給休暇取得推進の案内
- 各種研修・セミナーの開催通知
- 人事評価スケジュールの周知
制度・規程関連
- 就業規則改定のお知らせ
- 新しい福利厚生制度の利用案内
- 在宅勤務規程等の運用ルール説明
緊急・臨時対応
- 災害時の安否確認
- システムメンテナンスの事前通知
- 感染症対策等の緊急連絡
これらの文書作成においても、基本の3パターンを応用することで、効率的かつ効果的な社内コミュニケーションを実現できます。
使用時の注意点
生成AIを人事業務で活用する際は、以下の点に十分注意してください。
1. 個人情報の取り扱い
個人を特定できる情報(氏名、社員番号、所属部署等)は入力しないことを徹底してください。テンプレートとして作成し、個人情報は後から手動で追加する運用を推奨します。
2. 機密情報の保護
給与水準、評価基準、経営戦略に関わる情報等、社外秘情報は入力を避けてください。一般的な表現に置き換えて作成し、具体的な数値等は後から追記する方法が安全です。
3. 最終確認の徹底
生成された文書は必ず人間による最終チェックを行ってください。特に日付、数値、法的要件に関わる内容は、正確性を入念に確認する必要があります。
4. 法的・専門的内容の取り扱い
労働法規に関わる内容や就業規則等の重要文書については、生成AIで作成した文書を参考程度に留め、必ず社会保険労務士や法務部門等の専門家による確認を経てから使用してください。
まとめ
生成AIを活用した社内周知文の作成は、人事労務業務の効率化に大きく貢献します。本記事で紹介したプロンプトテンプレートを活用することで、品質を維持しながら作成時間を大幅に短縮できます。
重要なのは、AIを「文書作成の補助ツール」として位置づけ、最終的な確認と調整は必ず人間が行うという運用ルールを確立することです。この適切な役割分担により、業務効率化と品質確保の両立が可能となります。まずは定型的な業務連絡から始め、徐々に活用範囲を広げていくことで、人事部門全体の生産性向上につなげていただければ幸いです。
